IHRP 全国高校生異分野融合型研究プログラム

運営メンバーにインタビュー!【第一弾 企画代表 塚﨑天輝】

Amaki Tsukazaki

背景 ~なぜオーストラリアの大学で神経科学を学んでいるの?~

人間の意識がどのような構造なのかに興味があり、メルボルン大学で物理にも重点を置きながら神経科学を勉強している。

脳科学への興味に関しては、母の影響が強かった。元々母が、意識や脳、霊長類学に関する書籍を家で読んでおり、関連するトピックについて一緒に話したり、自分も本を手にとったりするうちに、人間の意識の構造に興味を持つようになった。また、物理への興味は、高校時代の課外活動に強く影響された。元々高校生のときは、ロボットなど工学に興味があり、ロボコンに参加し、運よく実績を出せたこともあった。大会参加時に、主催者の方から手作りのロボットで大気圏観測を行うプログラムを紹介してもらい、そこで宇宙放射線と空気粒子の相互作用を研究する機会を得た。物理現象の裏ではたらいているメカニズムを、実験やシミュレーションから推測・解明していくことに興味がわき、高校卒業時には、素粒子物理にも興味を持った。

早稲田大学に入学する頃には、量子力学と神経科学を融合させた分野に、非常に興味が湧いていたが、早稲田大学のカリキュラム上、物理と生物の両方を勉強し続けることが難しかった。そこで、メルボルン大学では、生物・物理系の科目をバランスよく取りながら、自分の興味を模索することにした。専攻は神経科学としながら、数学・物理学系の科目も取る予定である。生物の授業で、実際の生命現象の例を多く扱ったり、物理の授業で、身の回りの物理現象について深くまで学んだりする中で、生物と物理が交錯することも多い。物理学単体を通して自然現象を解析することにも興味があるが、将来は、物理(特に素粒子レベル)の理論を使って、生物の体の仕組み(特に高等生物の脳のメカニズム)を探っていきたいと思っている。

最近になって、ようやく自分のパッションが徐々に強まり、明確になってきたが、元々自分に狂おしいほどのパッションがあるわけではなかった。中学時代は、テストで良い点数を取ろうとするだけの優等生タイプだった。成績を取りさえすれば評価される日本の教育システムの中で、知的好奇心を追求することに意識が向くまでには、僕の場合は少し時間がかかった。変わるきっかけとなったのは、中3の頃にニュージーランドに留学する機会を得た後、海外大進学を視野に入れるようになったことだった。高1の頃に進路を考え始め、海外大へ進学した先輩たちの話を聞く中で、それぞれの興味に没頭している姿を目にした。勉強が、ただ競争に勝つための目的と化している日本の受験システムよりも、好きだから勉強をするという前提の上で、自分の興味を模索する機会が得られる海外大受験・進学に魅力を感じ、海外大受験を選択した。この選択が、知的好奇心を探求するマインドの土壌を作り、課外活動や勉強にエンゲージする中で興味が明確化していった。


IHRPでの活動について

IHRPでは企画代表をしている。自分が高校生の頃は用意されたプログラムの中で何かを作るという形式の課外活動をよくしていた。しかし、自分が実現したい理想を自分の手で創っていくというプロセスが好きで、IHRPの企画に携わるように。

自分自身、高校生の時に参加していた大気圏観測のプログラムで研究をしていたときに、シミュレーションの仕方がわからず研究者に教えてもらおうとしたが、無名の高校生は連絡しても相手にしてもらえなかった。また、一人で研究していたため、他の高校生と意見を交換する機会もなかった。このような経験から、自分が高校生の時に欲しかった環境を今の高校生に提供してあげたいと思い、IHRPでプログラムの企画をしている。

IHRPに入ったきっかけは、IHRPで事務をしているゆうや(事務代表:峯川 優也)が運営メンバーを探していたから。ゆうやとは高校時代に通っていた英語指導塾で面識があった。途中で進路が分かれ、高3以降は関わりがなくなってしまったが、早稲田大学で再会し、丁度ゆうやがIHRPの運営を探していたタイミングで、当時イエスマンだった自分は、IHRPに入った。

わたしが考える異分野融合とは?

異分野融合については今でも模索中。専門性をもっていない中高生が研究をすることには大人と真っ向から戦うことの難しさがあると思う。しかし高校生は、既存の枠組みに囚われない研究をしたり、分野関係なく様々なバックグラウンドをもった人達が集まって取り組んだりすることでそれを持ち味に異分野融合ができる。科学の世界では、高度な専門性を組み合わせることが異分野融合だとされがち。しかし、専門性を持っていない若い世代にもできる異分野融合の一つは、型にはまらない思考や未来への責任感、熱意によっていろいろな大人を巻き込んで、縦割り分業ではなく、横とのつながりをもって課題解決に取り組んでいくことだと思う。利害関係者である大人単体では解決が難しい問題も、高校生が第三者的な立場として独特な視点や切り口で物事を捉え、大人同士の間に立って彼らをうまく融合していくことで課題解決へコマを進めていけるのではないか。

例えば、一つの課題にさまざまなステイクホルダーの立場から取り組むことができるとき、それぞれが独立したアプローチを施すよりも、利害の衝突を乗り越え、お互いに協力して課題に立ち向かうことの方が、より解決に近づくケースも多いはず。しかし、現状では、課題解決をする際に横のつながりがなく、縦割り分業になっていることも多い。ステイクホルダー同士の壁を打破していくためには、若い世代であっても、まずは大人に認められる必要がある。その方法としては、「①自分たちなりの課題へのアプローチ方法(例:研究活動、創作活動、もっとカジュアルな方法もあり)によって、目に見える実績を出すこと」、「②常識にとらわれない斬新な思考、社会を変える熱意を世に発信することで、多くの大人の支持を得ていくこと」だと思う。実績を出し、周りの共感を得ていけば、より多くのステイクホルダーと関わりを持つ機会ができる。様々な立場の人の協力を仰ぐと(例:資金提供、研究環境)、自分の活動のスケールを拡大できる。それによりさらに多くの利害関係者と関わりを持てるようになったところで、全面協力してくれる内部の大人に、巧みな利害調整を任せる。色んなステイクホルダーとその架け橋となった若い世代をフィールドとして、人・モノ・金を動員できる大人に利害調整をしてもらう。最終的に、じわじわ縦割りを破壊し、異分野融合の成功例を実現する。若者が社会に切り込む姿を見て、行動を起こす若い世代の母数も増えていき、また新たな異分野融合をトリガーしていく。こんな壮大な話を考えている。

異分野融合がとても難しいことは想像がつくが、若い世代の「型にはまらない発想」「未来を背負う者としての気概」「人の良さ」を切り札として、今の社会に切り込んでいくことはできないか、そう希望を抱きながら、運営をしている。また、自分自身、周りの環境が恵まれていたが、プログラムを通して、参加者から「自分達の地域ではできなかったかも知れない」という声を聞き、地域格差の深刻さ勉強している途中。

IHRPの運営を通して

IHRPでの企画の仕事を通して、①IHRPの理念やモットーなどを、みんなで徹底的に議論しながら言語化していくこと ②理想をどのように具体的なプログラムに落とし込むかを考え、実行すること ③協力者のコーディネート、万が一の際の配慮などのロジスティクスを漏れなく検討すること を経験した。ロジスティクスを考える中で、仕事の要領が良くなった。また、良い意味で諦めが悪く、執着するようになった。今までは時間がないし、凝るのはここまでにするかぁと区切りをつけることがあったが、IHRPは1から作り上げていくものだからこそ妥協はできないし、思い通りに行かなくてもなんとか完遂しなければいけない。IHRP運営メンバーがそれぞれ自分たちの理想を持っているから、自分もそれに感化されて、譲れない部分が出てきた。

今年度のプログラムづくりは、答えがわからない状態から手探りで活動してきたため、後から見返してみると効率が悪かったなという思う部分もある。また、プログラムが始まってから、理念とプログラム内容との乖離を感じることがたまにあるため、定期的に運営内外からフィードバックをもらい、リアルタイムでプログラムを修正していく必要がありそうとも感じる。今後は、これまでのプログラム運営経験を基に、IHRPの理念をアップデートしていくと同時に、理念との整合性がより高いプログラム運営をしていきたい。

わたしにとってIHRPのプログラムとは?

IHRPは実践的なプログラムである。プログラムを通して高校生が自分なりに研究活動や社会実装活動を行い、社会課題に取り組む意味とか何かを追求していく。もしかしたら、プログラムを通して参加者が、「社会に若者が切り込んでいく」ロールモデルになることで、その姿を見た学生達が立ち上がったり、若者に対する大人の目線が変わったりと、社会に良い影響を与えるかもしれない。大人が専門性や社会的なしがらみの中で見えなくなっているもの、真っ直ぐで型にはまらない思考をする若者だからこそ見えるものがあると思う。IHRPのプログラムを通してそのような若者の視点にもっと光が当たるといいなと思っている。

僕らのプログラムには、2つの特長があると僕は思う。1つ目は、年の近い運営側と参加者との交流が、クリエイティビティを刺激しているということだ。参加者が一方的に知識吸収をしたり、個々が淡々と研究活動を行うようなプログラムとは違い、IHRPでは、運営メンバーが参加者の研究サポート・進捗確認を行ったり、参加者に混ざって対等な立場で議論に参加したりする。歳が近くて親近感が湧きやすい運営との交流の中には、思いがけない発見や発想が生まれることがあり(セレンディピティ)、参加者にとっても運営にとっても、非常に刺激的である。

2つ目の特長は、IHRPの組織としての柔軟性である。日々成長を重ねている大学生が運営するIHRPでは、メンバーがコミュニティ内外で得た知識や学びを、リアルタイムでプログラムに反映することも多い。私たちが一回り成長したら、また違う角度から違うプログラムづくりを考える様になるかも知れない。このような柔軟性を持つことで、必要なときに、メンバーの合意の下で、すぐにプログラムをより良いものにすることができている自信がある。

IHRPのプログラムは、プログラム運営者の自己満足や協力者のエゴのためにあるのではない。参加者には、このプログラムを通して貪欲に、自分にリミットをかけずに好き放題研究してほしいなと思っている。 

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