運営メンバーにインタビュー!【第一弾 理事長 楜澤哲】
背景〜なぜアメリカの大学で認知科学を学んでいるの?〜
ー大学で、今は何を学んでいるのですか?
イェール大学で認知科学を学んでいます。
ー認知科学になぜ興味を持ったのですか? 自分自身感情に左右されることが少なく、他の人たちがなぜ感情に左右されるのかに興味を持ったことが認知科学に興味を持ったきっかけです。例えば政治において何かをするときも、人間の感情やバイアスによって公平な判断ができていなかったり、ロジックに基づいていなかったりします。このような「なぜ人間が非合理な選択をしてしまうのか」ということに自分は興味があります。
ー中高時代は、何に興味を持っていましたか?
高校生の時は物理などの人間が関わっていない客観的な真実に興味がありました。ある一定以上の客観性がある科学に対し、全てが真の真実ではないということは認めざるを得ません。例えば、科学とは何かについて議論する科学哲学によると、全ての情報は人間によって異なるため人間が真の事実を理解し、取得することはできません。人間は0か100がが好きで、思想が混ざったら真の真実ではないと考える一方で、世の中には白か黒かはっきりしない非合理的なものが多いのが現実です。
IHRPの立ち上げについて〜立ち上げに至った経緯・思いとは〜
ーIHRPの立ち上げに至った経緯はなんですか?
中学3年生からディベートと模擬国連に取り組んでおり、そのときの経験がIHRP立ち上げの根本的なアイディアになりました。途中までは楽しかったのですが、社会的な枠組みだけに注目していて課題の理解度やそれに対するアイディアが試されていないことに中身が薄いなと感じるようになりました。
当時、海洋プラスチックモデルやそれに対するデモンストレーションを行っていたのですが、あまりしっくりこず、もっと深く踏み込んで理解を深めたいと思い、自分で研究を行っていました。また、中(参加者)と外(研究者)をつなぐことの難しさも感じていたため、新型コロナウイルスのパンデミックの影響で高校の授業がオンラインになったのを機に、自分の理想である「中と外をつなぐプログラム」であるIHRPを立ち上げました。
ーIHRPを通して伝えたい思いはなんですか?
あるテーマに対して真っ向からぶつかって触れてみる、その問題にとにかく浸かってみるということが、分野という概念を一旦置いてそのテーマに関して様々な視点を得る上で大切なことであると考えています。言葉だけでなく何かアクションを起こしてみよう、アクションを起こしてテーマに関する得られる限りの経験と情報を得てみようという意味で、IHRPでは「研究」に着目しています。更に奥を掘っていき、わかったことを元にそれを応用していく。このサイエンスの始まりと同じ本質は社会でも最近重視されており、IHRPのプログラムも重視しています。
わたしが考える異分野融合とは?
ー異分野融合とはなんだと思いますか?
現在の縦割りの社会システムは、目的を持ったアクションを起こすことを阻んでしまいます。そのため、今の社会システムに異分野融合を取り入れ、縦割りの分野の隔たりを越えてテーマを自由に扱い、何かを知るために学びを深めていく「研究」を自由に行うことのできる世界を目指すことが大切であると自分は考えています。研究室においても、隣の研究室が何を研究しているのかを知らないということがよくあり、分業の行き過ぎに違和感を覚えました。テーマごとに専門家が研究するという分野同士の隔たりにも一理ありますが、効率よく研究するためにも異分野融合は重要であると考えています。
ーもう一つのコンセプトである「多様な高校生にチャンスを」に込められた思いはなんですか?
IHRPのもう一つのコンセプトである「多様な高校生にチャンスを」は、徳島県出身の松本杏奈さんのアイディアです。住んでいる地域によって持っているアイディアが異なり、多様なバックグラウンドを持つ高校生がともに研究に取り組むことにより見えてくる新たな問題には大きな価値があると自分は信じています。教育機会の地域格差を是正することの重要さと、異分野融合を促すための高校生の多様性という2つの理由から、「多様な高校生にチャンスを」をIHRPのプログラムの一つのコンセプトとして掲げています。
わたしにとってIHRPのプログラムとは?
ー自分にとってIHRPとはなんですか?
IHRPを通じて、30社くらいの企業や100人くらいの研究者とお話をする機会がありました。その中で、どのようなことを相手は望んでおり、どのように相手と関係を築いていくのか、社会にはどのようなコンセンサスが存在し、そして社会はどのように機能しているのかという読んでいるだけではわからないようなことを経験でき、自分にとってとても大きな経験になりました。
また、IHRPの運営メンバーを率いていく中で、自分は合理性を求めてしまいがちですが時には合理性だけでなく感情が大切になることがあるということにも気づくことができました。
大学などが忙しく、IHRPの活動を続けることが困難だと感じることもありましたが、発表会などで実際にプログラムの参加者たちに会い、彼らのエネルギーや一緒に研究に取り組む仲間に出会えてよかったという言葉を聞いて、自分たちがIHRPを通してしている活動の素晴らしさを再認識することができました。